昨日見かけた白くて小さな植物

ヒナノシャクジョウ

昨日見かけた白くて小さな植物。

白色が目に入って最初キノコかと思いましたが、よく見たらキノコではありません。腐生植物かと写真を撮り、帰宅後調べてみたら、ヒナノシャクジョウ(雛の錫杖)のようです。

腐生植物。今では菌従属栄養植物とも呼ばれています。葉緑素を持たず光合成を行わない、土壌中の菌類に寄生して生きる植物。

南方熊楠が神社合祀反対を訴えて帝国大学理学部植物学科教授の松村任三氏に宛てた書簡には、熊野の森の豊かさを説明する文章の中でヒナノシャクジョウが出てきます。

たとえば、岩窪1尺四方ばかりのうちに落葉が落ち重なっているところに、ルリシャクシャクジョウ、ヒナノシャクジョウ、オウトウクワとホンゴーソウ、また Xylaria filiformis と思われる硬嚢子菌が混生する所がある。

「南方二書」口語訳

熊楠はこの一文で熊野の森の豊かさを植物学の権威者・松村任三氏に訴えました。

30cm四方に、ルリシャクシャクジョウ、ヒナノシャクジョウ、オウトウクワ(※キヨスミウツボ)とホンゴウソウが生える。この4種は光合成しない無葉緑植物です。

ルリシャクシャクジョウ、ヒナノシャクジョウ、ホンゴウソウの3種は菌類から養分をもらって生活する菌寄生植物。キヨスミウツボはアジサイ類やマタタビ類などに寄生する植物寄生植物。滅多に遭遇できないこれらの植物が30cm四方のなかに生えているのが熊野の森。

光合成をやめた寄生植物の豊かさはその森の豊かさを示します。とくに菌寄生植物の豊かさは土壌中の菌類の豊かさに根ざします。土壌中の生物の豊かさが森の豊かさなのです。