黒八大明神、ご存知の方いらっしゃいますか?

黒八大明神(くろはちだいみょうじん)をご存知の方、いらっしゃいますか?

和歌山県東牟婁郡のどこかでお祀りされている神様なのですが、どこにあるのかは検索しても出てこず、わかりませんでした。今ではもうお祀りされていないのかもしれません。

黒八大明神はもとは黒八という名前の人間です。

黒八爺さんは2匹のつがいの狼と山で出会って仲良くなった。狼たちは家に帰る黒八爺さんに付いてきて、黒八爺さんと一緒に暮らすようになった。それからというもの、田畑を荒らす鹿や猪などが狼を恐れて村に降りて来なくなり、村は豊作になった。黒八爺さんの死後、村人たちは感謝の気持ちを込めて黒八大明神としてお祀りするようになった。

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ニホンオオカミの剥製(国立科学博物館所蔵) Momotarou2012投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

このお話は1975年に初版が発行された『紀州の民話(日本の民話56)』(徳山静子編、未来社)に収められており、場所は東牟婁郡とだけ書かれています。これをもとに「まんが日本昔ばなし」でアニメ化されました(1977年5月21日放送)。

『紀州の民話(日本の民話56)』の黒八大明神のお話は『熊野詣』という本に収められたものをもとにしており、この『熊野詣』がいつ出版されたものなのかは不明。

『紀州の民話(日本の民話56)』は新版が2016年に発行されました。息の長いよい本です。

能の「翁」って神事!

YouTubeで能の「翁」を見ました。
正月初会や祝賀能などで行われる、「能にして能にあらず」といわれる別格の演目。

緊張感がすごいです。能楽師が行いますが、これは神事です。
これといったストーリーはなく、謡には呪文のような意味のわからないものもあります。

シテ  上「とうどうたらりたらりらたらりら
地   上「ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
千歳  下「鳴るは滝の水。鳴るは滝の水日は照る
地   上「絶えずとうたり ありうどうどうどう
千歳  下「絶えずとうたり。常にたうたり (舞)

宝生流謡曲 翁

室町時代の能楽師で世阿弥の娘婿に当たる金春禅竹(こんぱる ぜんちく)が翁について書いた『明宿集』という秘伝書があって、それがすごい内容で驚かされました。

現代語訳が中沢新一氏の『精霊の王』に収録されています。その冒頭を以下に。

そもそも翁という神秘的な存在を探求してみると、宇宙創造のはじまりからすでに出現していたものだということがわかる。そして地上の秩序を人間の王が統治するようになった今の時代にいたるまで、一瞬の途切れもなく、王位を守り、国土に富をもたらし、人民の暮らしを助けてくださっている。

中沢新一『精霊の王』講談社、322頁

翁というものは神秘的なもので、私にはよくわかりませんが、この世界のあらゆるものに底通し、霊妙な働きを及ぼしている世界の根本のような存在なのかもしれません。

謡の文句に「鳴るは滝の水」とあるので、神聖な滝のもとか滝つ瀬の岸辺で神事を行っている格好なのかも。

滝

熊野地方の漁村出身の日系人たちが作っていたチキン・オブ・ザ・シー

マグロ油漬け缶詰は20世紀初頭のアメリカで発明されました。
その缶詰は鶏肉のように食べやすいことからチキン・オブ・ザ・シー(海の鶏肉)と名付けられました。

はごろもフーズが製造しているツナ缶のシーチキンという商品名は、このチキン・オブ・ザ・シーに由来します。

チキン・オブ・ザ・シーを作っていたのが、ロサンゼルス港の人工島ターミナルアイランドに住み着いた太地を中心とした熊野地方の漁村出身の日系人でした。男たちは海で漁師として働き、女たちは工場で魚をさばき缶に詰める作業に従事しました。

彼らは日米開戦により強制収容所に入れられ、ターミナルアイランドの日本人村も更地とされました。

終戦により解放された彼らはその後も大半はアメリカに住み続けました。

これらのことは、村井章介 監修、海津一朗 ・稲生淳 編著『世界史とつながる日本史 紀伊半島からの視座』の第23章、中西健「 クジラの町の移民から学ぶ国際理解」に書かれています。多くの和歌山県民に読んでいただきたい1冊です。

このような地域の移民の歴史を知ると、日本で働く外国人にも親しみを感じるようになります。地域の移民の歴史を学ぶことは、日本が多文化共生社会を築いていくうえで重要な取り組みであるように思います。