山姥の髪の毛!

山姥の髪の毛!

こんなに長いのは初めて見ました!

山姥の髪の毛!

その正体はキノコ。キノコの菌糸が束になってひも状になったものです。

山婆の髪の毛と那智の辺で呼ぶ物を予はたびたび見た。水で濡れたときは黒く、乾けば色はやや淡くなって黄褐を帯び、光沢があり、やや堅くなる。長さは21〜24cm、また30cmにも及ぶ。杣人などに聞くと、ずっと長いものもあると言う。予が見たのは木の枝に生え垂れ懸かっていて女の髪のようであった。…

予が那智山中で初めて見たときは奇怪に思ったが、近づいて取って検鏡して、たやすくそれがマラスミウス属の根様体(リゾモルフ)であることを知ったが、その後、植物学会員宇井縫蔵氏が近野村で取って来たのを貰うと、予想通りマラスミウス属の傘状体(ピレウス。俗にいうキノコの傘)がひとつ生じてあった。

南方熊楠「山姥の髪の毛」(口語訳)

私が見たこれは木の枝に生え垂れ下がって、長さは1m以上ありました。

山姥の髪の毛
山姥の髪の毛

昔は神社やお寺などに奉納されて社寺の宝物となることもあったそうです。ありがたいものを見させてもらいました。

山姥の髪の毛がキノコであることを日本で初めて明らかにしたのはたぶん南方熊楠です。「山姥の髪の毛」は『南方熊楠全集 第2巻』や『南方熊楠コレクション 森の思想』に所収。

第30回南方熊楠賞受賞者・北原糸子氏の記念講演が視聴できます!

第30回南方熊楠賞

昨日11月7日、第30回南方熊楠賞授賞式が開催されました。
受賞者は北原糸子氏は日本の災害史研究が専門の歴史学者。

北原糸子氏の受賞記念講演が南方熊楠顕彰会公式YouTubeチャンネルで期間限定配信されています。視聴できるのは11月15日(日)17時まで。

昨日見かけた白くて小さな植物

ヒナノシャクジョウ

昨日見かけた白くて小さな植物。

白色が目に入って最初キノコかと思いましたが、よく見たらキノコではありません。腐生植物かと写真を撮り、帰宅後調べてみたら、ヒナノシャクジョウ(雛の錫杖)のようです。

腐生植物。今では菌従属栄養植物とも呼ばれています。葉緑素を持たず光合成を行わない、土壌中の菌類に寄生して生きる植物。

南方熊楠が神社合祀反対を訴えて帝国大学理学部植物学科教授の松村任三氏に宛てた書簡には、熊野の森の豊かさを説明する文章の中でヒナノシャクジョウが出てきます。

たとえば、岩窪1尺四方ばかりのうちに落葉が落ち重なっているところに、ルリシャクシャクジョウ、ヒナノシャクジョウ、オウトウクワとホンゴーソウ、また Xylaria filiformis と思われる硬嚢子菌が混生する所がある。

「南方二書」口語訳

熊楠はこの一文で熊野の森の豊かさを植物学の権威者・松村任三氏に訴えました。

30cm四方に、ルリシャクシャクジョウ、ヒナノシャクジョウ、オウトウクワ(※キヨスミウツボ)とホンゴウソウが生える。この4種は光合成しない無葉緑植物です。

ルリシャクシャクジョウ、ヒナノシャクジョウ、ホンゴウソウの3種は菌類から養分をもらって生活する菌寄生植物。キヨスミウツボはアジサイ類やマタタビ類などに寄生する植物寄生植物。滅多に遭遇できないこれらの植物が30cm四方のなかに生えているのが熊野の森。

光合成をやめた寄生植物の豊かさはその森の豊かさを示します。とくに菌寄生植物の豊かさは土壌中の菌類の豊かさに根ざします。土壌中の生物の豊かさが森の豊かさなのです。