蛍狩りの呼び声は地域によってバリエーションがありました

蛍

蛍狩りの呼び声は地域によってバリエーションがありました。
以下、南方熊楠「紀州俗伝」より。

……紀州田辺辺りで行われる、「ほーたる来いほーたる来い。彼方の水は苦い、此方の水は甘い、ほーたる来いほーたる来い、行灯の光で蓑着て来い」(または行灯の光を見かけて来い)。

田辺町とほとんど町続きである神子浜では、「ほー、ほー、ほーたる来い。彼方は云々」と言ったあとで「ほー、ほー、ほーたる来い、行灯の光で蓑きて笠きて飛んで来い」と言う。

有田郡津木村などでは、単に「蛍来い、蛍来い天河の水呑まそう」と言う。
南方熊楠「紀州俗伝」口語訳3−3

全国的に一般に知られているのは、わらべうたの「ホーホー 蛍こい」。

ホー ホー 蛍こい
あっちの水は 苦いぞ
こっちの水は 甘いぞ
ホー ホー 蛍こい
山路(やまみち) こい
行燈(あんど)の光で
又こいこい

今でも地域によるバリエーションは残っているのでしょうか。

写真は妻が先日撮影したもの。

卯の花と音無川

ウツギ

卯の花の盛りは過ぎてしまいましたが、卯の花と音無川のことを詠んだ歌があるので、ご紹介します。写真は5月下旬に撮影したもの。

 卯の花をよめる/源盛清

卯の花を音無河の波かとてねたくも折らで過(すぎ)にけるかな

白河上皇の院宣により編纂された第5勅撰和歌集『金葉和歌集』に収められた歌(補遺歌 671)。

(訳)卯の花を音をたてずに流れる音無川の波かと思って、腹立たしいことに折らずに通り過ぎてしまったよ。

「音無し(音がない)」を懸詞とする歌。卯の花は、その白さから波に喩えられます。

音無川、音無の里、音無の滝:熊野の歌