石炭紀

世界にまるで不用の物なし。
私が好きな南方熊楠の言葉のひとつです。

世界にまるで不用の物なし。多くの菌類や黴菌は、まことにせっかく人の骨折って拵えた物を腐らせ、悪むべきのはなはだだしきだが、これらが全くないと物が腐らず、世界が死んだ物で塞がってニッチも三進もならず。そこを醗酵変化、分解融通せしめて、一方に多く新たに発生する物に養分を供給するから、実際一日もなくてならぬ物だ。
(「鼠に関する民俗と信念」『南方熊楠全集』一巻)

現在より3億5920万年前から2億9900万年前までの石炭紀と呼ばれる時代。
この時代、地上では高さ20m〜30mに及ぶ巨大なシダの巨木が大森林を形成し、昆虫や両生類が栄えました。

石炭紀と呼ばれるのはこの時代の地層から多く石炭を産するから。

当時、木を分解できる菌類がおらず、木は枯れても腐りませんでした。枯れた木は腐らずに地中に埋もれ、そこで地熱や圧力を受けて石炭となりました。

石炭紀末期(2億9000万年前)に木を分解する能力を獲得した菌類が登場し、木が腐るようになり、石炭が生成されにくくなりました。

木を分解できる菌類が十分に進化した現在、そうした菌類が生息できないが木は生息できるという特殊な環境の場所だけでしか石炭は生成されなくなりました。

おそらくもう2度と石炭紀のような時代が訪れることはないでしょう。

木を分解できる菌類の登場で、生態系はより豊かになりました。