『神道集』所収の「熊野権現の事」では、垂仁天皇のときに諸国に大疫病が起こり、3742社もの神社を国々に祭り置かれたと

各地の有名な神社の神々の御由緒譚を集めた『神道集』という説話集があります。南北朝時代に成立したと考えられるこの説話集にはもちろん熊野の神様の御由緒譚も収められています。

『神道集』の熊野の神様の御由緒譚「熊野権現の事」によると、熊野三所権現は第7代天皇・孝霊天皇のときに祭られるようになったとされます。
熊野権現の事(熊野の本地)現代語訳5

その後、第10代天皇・崇神天皇のときに若一王子(にゃくいちおうじ)が現れ、第11代天皇・垂仁天皇のときに熊野十二所権現が勢揃いし、熊野への道沿いに諸王子社が現れたとされます。そして、その垂仁天皇のとき、諸国に大疫病が起こり、帝は大いに驚かれて3742社もの神社を国々に祭り置かれたと「熊野権現の事」では語られます。
熊野権現の事(熊野の本地)現代語訳6

垂仁天皇が置いたと語られる3742社の中に熊野十二所権現のうちの九所や諸王子社が含められているのかはわかりませんが、わざわざ熊野の神様の御由緒譚の中でこのように語られたのは、疫病退散も熊野の神様が与えるご利益なのだと考えられていたからなのでしょう。

熊野参詣をされた方々に御加護がありますように。