南方熊楠が提供した資料がアメリカ連邦議会図書館で永久保存

南方熊楠が提供した資料一式がアメリカで永久保存されていることが、本日の南方熊楠顕彰館での座談会「熊楠の好物を味わう」のなかで松居竜五先生(2017年に『南方熊楠一複眼の学問構想』で第15回角川財団学芸賞を受賞)から報告されました!

保存されている場所はワシントンにある世界最大の図書館、アメリカ連邦議会図書館!

熊楠からアメリカ農務省のスウィングル氏に贈られた絵巻物『山の神物語』と、その詞書きの写し、魚の写生や標本。その一式がアメリカ連邦議会図書館で永久保存されているのだそうです!

すごい!

しかも、それが民俗学と生物学を行き来した熊楠らしい一式であるのもすごい!

この絵巻物はもともと題がなく、熊楠は仮に『山の神物語』と題をつけましたが、それは以下のような物語です。

狼形の山神オコゼ魚を恋い、ついにこれを娶るを、章魚(たこ)大いに憤り、その駕を奪わんとせしも、オコゼ遁れて、ついに狼の妻となる譚(ものがたり)にて、文章ほぼ室町季世の御伽草子に類せり。
「山神オコゼ魚を好むということ」『南方熊楠全集2』平凡社、251頁)

資料のなかにある熊楠の筆による魚の写生は、オコゼではなく、海に棲むミノカサゴと、川に棲むアユカケの2種。熊野ではこの2種がオコゼと呼ばれていたのかもしれません。

『本朝食鑑』のカジカ魚、『大和本草』の川オコゼも、『水族志』にこれと同物としある。『南方随筆』二四九頁〔「山神オコゼ魚を好むということ」〕に出た「むかし人あり、十津川の奥白谷の深林で、材木十万も伐りしも、水乏しくて筏出すあたわず。よって河下なる土小屋の神社に鳥居(現存)を献じ、生きたるオコゼを捧げ祈りければ、翌朝水おおく出でて、その鳥居を浸し、件の谷よりここまで、筏陸続として下り、細民生利を得ることこれ多し。その人これをみて大いに歓び、径八寸ある南天の大木にのり、流れに任せて之(ゆ)く所を知らず」という咄のオコゼは、海産の物を活きながらここまで運ぶはとても叶わず。たぶん、この川オコゼすなわちアイカケであったろう。学名コックス・ボルルックスで、海魚コチ科に近いカジカ科のものだ。
(「ドンコの類魚方言に関する藪君の疑問に答う」『南方熊楠全集4』平凡社、417-418頁)

松居竜五先生の著書『南方熊楠一複眼の学問構想』
(第15回角川財団学芸賞受賞)

熊楠コッフィ(Kumagusu Coffee)、cafe almaさんで本日から販売開始!

熊野本宮大社瑞鳳殿1階にあるcafe almaさんの新商品「熊楠コッフィ(Kumagusu Coffee)」!

本日販売開始!

ドリップコーヒーのパッケージが南方熊楠です!

イラストは犬ん子さん!

熊楠はアメリカ・イギリス滞在時にコーヒーを覚え、帰国後もコーヒーに親しみました。熊楠はコーヒーを「コッフィ」または「コフィー」と記しています。

熊楠をモチーフにした商品がもっと増えてくれたらいいな、と思っています。

幸田露伴に「日本一美味の鮨」と言わしめた縄巻鮨が復元されました!

今日は、南方熊楠顕彰館での座談会「熊楠の好物を味わう」を聴きに行きました。

一番の目当てはグリル食菜ギャレットの赤堀展也さんによって復元された縄巻鮨(なわまきすし)!

熊楠が贈答品に使った田辺の名産品。昭和10年代後半に失われた幻の鮨です! すごいです!!

熊楠の大正10年4月9日付の上松蓊(うえまつ しげる)宛書簡に、

四月の『現代』に、幸田露伴氏、紀州田辺に過ぎたるもの二つ、南方熊楠君と日本一美味の鮨とあり。この美味の鮨とは前日差し上げたる縄巻鮨のことと存じ候。
(『南方熊楠全集 別巻1』平凡社、82頁)

とある縄巻鮨。

田辺ならではの名品で、日持ちがして、見た目もユニークなので、遠方にいる人への贈答品には最適だったのでしょう。

熊楠の昭和5年3月19日付の白井光太郎宛書簡には、

山の芋にてこの鮨を作るに長芋とつくね芋は粘り多しとかにて、さらに用うるに堪えず、自然薯のみ用うるに堪ゆ。……またこの鮨用の魚はサゴシ(サワラの若きもの)に限る。……サゴシの骨を去り上図のごとく自然薯のすりつぶした西洋料理の mash をサゴシの皮肉でつつみバレンの葉でまき、その上を縄でまといおくときは、醗酵してすしとなるなり。アップル(苹果)の熟せしような臭いなり。
(『南方熊楠全集9』平凡社、526頁)

とあります。縄巻鮨は米ではなく自然薯を使います。

イグサの縄で巻くので、その縄を作らなければならないのがいちばん大変なのだそうです。

手に持ってみたらずっしりと重たかったです。

大正9年頃に1本3円以上した縄巻鮨ですが、いま販売するなら1本1万円だそうです。ものすごく手間隙がかかっています。

グリル食菜ギャレットさんでは5月10日から期間限定で、要予約で夜の営業時間のみ「熊楠御膳」を提供されます。熊楠がよく食べたビーフステーキや茶粥、そして縄巻鮨。お値段は3,000円だったか3,500円だったか、覚えていませんが、そのあたりです。