本日1月24日は大逆事件で新宮市名誉市民・大石誠之助らが処刑された日

大石誠之助
雨宮栄一 – 『牧師植村正久』、新教出版社、p.245, パブリック・ドメイン, リンクによる

本日1月24日は大逆事件で大石誠之助らが処刑された日。
明治44年(1911年)1月24日。判決からわずかに6日後という異例の早さで死刑が執行されました。

大石誠之助は2018年に新宮市の名誉市民となった明治時代の新宮町の医師、社会主義者。

明治43年(1910年)5月以降、多数の社会主義者・無政府主義者たちが明治天皇暗殺計画を企てたとして検挙され、翌年24名が大逆罪により死刑または無期刑に処せられた「大逆事件」。大逆罪とは、天皇、皇后、皇太子等を狙って危害を加える事を指した罪名。適用される刑罰は死刑のみ。

公判、刑執行は異例の速さで進められ、明治44年(1911年)1月18日に24人が死刑判決、2人が有期刑判決を受けました。死刑判決を受けた24人のうち6人が熊野人でした。

24人のうち11人が1月24日に死刑執行され、翌25日にはもう1人が死刑執行されました。残りの12人は特赦で減刑されて無期刑となりました。熊野人6人のうちでは2人が死刑、4人が無期刑に処されました。

その逮捕のきっかけは、明治41年(1908年)7月25日、社会主義者・幸徳秋水が新宮町の大石誠之助を訪ねたときのこと。大石誠之助は友人を誘い、熊野川に船を浮かべ、幸徳秋水を歓待する月見の宴を張ったといわれます。そしてその船上で幸徳秋水らは天皇暗殺の謀議を行なった、と。このことにより明治43年(1910年)6月、幸徳秋水、大石誠之助らが逮捕されました。

熊野地方から逮捕され、刑に処された6人の名前は以下の通り。大石誠之助(和歌山県新宮町・死刑)、成石平四郎(和歌山県請川村・死刑)、高木顕明(和歌山県新宮町・無期刑)、峯尾節堂(和歌山県新宮町・無期刑)、崎久保誓一(三重県市木村・無期刑)、成石勘三郎(和歌山県請川村・無期刑)。

この「大逆事件」は、社会主義を恐れた政府が社会主義者たちを一網打尽にするために仕組んだ謀略であったというのが事の真相で、そのフレームアップ(でっち上げ)を行う舞台として熊野の中核的な都市であった新宮の町が選ばれました。

幕末、第二次長州征伐(1866年)の折に紀伊新宮藩主の水野忠幹が幕府軍の先鋒を務め、長州軍を撃破しました。長州軍は水野忠幹を「鬼水野」と呼んで怖れたといいます。明治維新から40数年を経ても明治政府は新宮の町を危険な場所だと認識していたのでしょう。

黒八大明神、ご存知の方いらっしゃいますか?

黒八大明神(くろはちだいみょうじん)をご存知の方、いらっしゃいますか?

「まんが日本昔ばなし」でその由来がアニメ化されたことのある、和歌山県東牟婁郡のどこかでお祀りされている神様です(1977年5月21日放送)。

しかしながら東牟婁郡のどこでお祀りされているのかは検索しても出てこず、わかりません。今ではもうお祀りされていないのかもしれません。

黒八大明神はもとは黒八という名前の人間です。

黒八爺さんは2匹のつがいの狼と山で出会って仲良くなった。狼たちは家に帰る黒八爺さんに付いてきて、黒八爺さんと一緒に暮らすようになった。それからというもの、田畑を荒らす鹿や猪などが狼を恐れて村に降りて来なくなり、村は豊作になった。黒八爺さんの死後、村人たちは感謝の気持ちを込めて黒八大明神としてお祀りするようになった。

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ニホンオオカミの剥製(国立科学博物館所蔵) Momotarou2012投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

このお話は1975年に初版が発行された『紀州の民話(日本の民話56)』(徳山静子編、未来社)に収められており、場所は東牟婁郡とだけ書かれています。これをもとに「まんが日本昔ばなし」でアニメ化されました。

『紀州の民話(日本の民話56)』の黒八大明神のお話は『熊野詣』という本に収められたものをもとにしており、この『熊野詣』がいつ出版されたものなのかは不明。

『紀州の民話(日本の民話56)』は新版が2016年に発行されました。息の長いよい本です。

能の「翁」って神事!

YouTubeで能の「翁」を見ました。
正月初会や祝賀能などで行われる、「能にして能にあらず」といわれる別格の演目。

緊張感がすごいです。能楽師が行いますが、これは神事です。
これといったストーリーはなく、謡には呪文のような意味のわからないものもあります。

シテ  上「とうどうたらりたらりらたらりら
地   上「ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
千歳  下「鳴るは滝の水。鳴るは滝の水日は照る
地   上「絶えずとうたり ありうどうどうどう
千歳  下「絶えずとうたり。常にたうたり (舞)

宝生流謡曲 翁

室町時代の能楽師で世阿弥の娘婿に当たる金春禅竹(こんぱる ぜんちく)が翁について書いた『明宿集』という秘伝書があって、それがすごい内容で驚かされました。

現代語訳が中沢新一氏の『精霊の王』に収録されています。その冒頭を以下に。

そもそも翁という神秘的な存在を探求してみると、宇宙創造のはじまりからすでに出現していたものだということがわかる。そして地上の秩序を人間の王が統治するようになった今の時代にいたるまで、一瞬の途切れもなく、王位を守り、国土に富をもたらし、人民の暮らしを助けてくださっている。

中沢新一『精霊の王』講談社、322頁

翁というものは神秘的なもので、私にはよくわかりませんが、この世界のあらゆるものに底通し、霊妙な働きを及ぼしている世界の根本のような存在なのかもしれません。

謡の文句に「鳴るは滝の水」とあるので、神聖な滝のもとか滝つ瀬の岸辺で神事を行っている格好なのかも。

滝